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6月の加賀海岸

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 加賀海岸は、長さ約5kmの海食崖と長さ約4.4kmの海岸砂丘で知られた景勝の地です。
この海食崖の各所にハナショウブの原種といわれるノハナショウブの群落が見られます。
1998年以来17年間、この場所を訪れていますが、なかなか最盛期に巡り会う機会は少なく、今年もいま1歩という状態でした。
これまで撮影した中では、昨年6月17日に撮影し、植物生態観察図鑑-おどろき編の96~97ページの見開きに使ったのが最高の景色でした。
 海食崖というのは、陸地が激しい波の浸食によって切立った崖になったところです。この日も激しい波が岩盤に打ち付けていました。遠く加佐ノ岬を見ると大きな岩の塊が崩れ落ちています。何十年前、あるいは何百年前に崩れたものでしょうか。
 その後、砂丘の方にも足を伸ばしました。2ヶ月ぶりです。
4月には未だ葉だけだったナミキソウ(波来草)もしっかり咲いていましたが、今日のお目当てはネナシカズラとアメリカネナシカズラです。
アメリカネナシカズラはあらゆるものに寄生して盛んでした。ところどころにはネナシカズラツルコブフシと呼ばれる虫こぶが見られ、中にはマダラケシツブゾウムシが入っています。名前には「ネナシカズラ」と付いていますが、未だかつてネナシカズラに付いているのを見たことはなく、アメリカネナシカズラだけです。
 アメリカネナシカズラはハマゴウにもよく寄生するのですが、寄生を受けたハマゴウの葉が赤銅色に紅葉しているのをよく見かけます。葉が枯れる寸前の状態を表しているのでしょうか。また、寄生されて枯れたウンランも見ました。もっとも、枯れた原因が寄生によるものかどうかは不明ですが。

☆ 横1024ピクセルの大型画像は、mizuaoiの写真館でご覧下さい。
  http://mizuaoi.photo-web.cc/index.htm

ベニバナセンブリとハナハマセンブリ

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 自宅にはヨーロッパ原産の帰化植物ベニバナセンブリとハナハマセンブリが植えられています。
 6月4日、今年のベニバナセンブリの初開花です。ハナハマセンブリは6月5日でした。昨年は両者共に6月8日でした。
 ベニバナセンブリとハナハマセンブリはよく似た植物で、クローズアップで見ないと区別が難しいです。引いた全体像の写真では間違って名前を付けられていることもしばしばです。
 例えば、日本の帰化植物 平凡社 初版第1刷 のベニバナセンブリの写真はハナハマセンブリのように見えます。日本帰化植物写真図鑑 全国農村教育協会 第1刷 のベニバナセンブリの写真もハナハマセンブリの写真ですが、こちらは、ハナハマセンブリの間違いであることに気づいて、正誤表が配布され、解説文もハナハマセンブリに書き換えられています。
このように両専門書が写真を間違え、しかも両書共にハナハマセンブリの写真であるということで、ベニバナセンブリの実態が分かり難くなっています。
 なかなかさんのホームページ「花*花・flora」によれば、全国的な分布状況はハナハマセンブリの方が多いようです。従って、多くの人がハナハマセンブリのすばらしい紅色の花を見て、なるほど、これぞベニバナセンブリと誤認している例が、ネット上にはしばしば見られます。
 また、図鑑には、花の時期に根生葉がロゼットを形成する(ベニバナセンブリ)かしない(ハナハマセンブリ)かが両者の区別点だとの記述があるので、根生葉で区別をしている人も居ますが、これは誤りです。根生葉の状態では区別はできません。
 クローズアップで花の写真で見ると両者は明らかに区別ができます。ベニバナセンブリは柔らかな紅色で、ハナハマセンブリはくっきりとした紅色だからです。また花の大きさもはっきり異なります。しかし、両者を並べてみることのできる場合には明瞭ですが、どちらか一方だけしか見られない場合には、紛らわしいことでしょう。
 なお、この植物は葯がねじれて花粉を絞り出す?のが特徴ですが、開花直後の葯はねじれていません。時間経過とともに次第にねじれてきます。その様子も撮影してみました。
 これらのことについては、拙著「植物生態観察図鑑 おどろき編」のp.175から183の9ページにわたって詳しく解説してありますので、ぜひともお読み頂きたいと思います。

☆ 横1024ピクセルの大型画像は、mizuaoiの写真館でご覧下さい。
  http://mizuaoi.photo-web.cc/index.htm

スタートはツユクサ(露草)です。

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 主として、石川県で見られる野生植物について、名前を知るだけではなく、その植物がもつ生きるための工夫や詳しいつくりなどを見ていくことにいたします。植物を見る目が広がり、楽しくなる観察日記です。

ツユクサ(露草)
 庭先や路傍の雑草として咲く夏の花です。早朝開花して、昼頃にはもう花が閉じるので、「朝露でぬれている間は美しいが、露が乾く昼頃にはしぼんでしまう」といった意味から付いた名でしょう。
 ツユクサ科の1年草で、花は萼片3、花弁3、雄しべ6の3を基本とする数からできています。しかし、青い色の大きな花弁が2枚だけ上方に見えていますね、もう1枚はどれでしょう。下の方で、小さくて無色の花弁となっています。面白いのは雄しべです。上の方に3個の「π」字形をした黄色い雄しべがあります。これは昆虫に花をアピールする目印で、花粉はほとんど作りません。もう1個、「人」字形をした雄しべがあります。これは花の中心部をアピールするためのものでしょう。花粉はかなり出します。残った2個の雄しべは、花の外へ長く突き出し、花粉をたくさん出しています。
 ツユクサは、昆虫に花粉を運んでもらう「虫媒花(ちゅうばいか)」ですが、もし昆虫が来てくれなかったら種子を作ることができません。そのような非常事態に備えて、一つの巧妙な作戦を立てています。昼頃、花が閉じるときに、長い雄しべがくるくると巻いて、雌しべにからまり、自分の花粉で自分の雌しべに受粉する「自花受粉」ということをして確実に種子を作ります。
 近所にツユクサがあったら、花を閉じるところまでを、ぜひ観察してみましょう。